むかし、むかしの話しです。中華屋さんで働いていたころのお話。
どこの中華屋さんでもそうかも知れませんが、鶏の唐揚げって結構人気メニューなんです。結構な数が出ていました。でも、ボクはあまりおいしく感じられなかった。
だから、よくヒマを見つけてはもっとおいし〜唐揚げができないかなーと、試行錯誤していました。勝手に味付けを変えるなんて言語道断ってお店もありますが、普通はそうだと思いますが、ボクが働いてたお店は結構自由なお店だったんです。
それで、まぁ、なかなかうまいことできましたゾ。と、思える唐揚げが出来上がったんです。
そして翌日夕方からお店に入り、注文を待っていました。
最初にどんなお客さまがニューカラアゲカナコちゃんスペシャルを召し上がって下さるのかなぁ〜などとワクワクしていました。
そんなボクの気分を台無しにするようにドカドカガヤガヤと身体のでっかい運動部帰り風のオトノコ3名がお店に入ってきました。
もーおっきな声でしゃべるし、周りの迷惑も考えろっちゅーの!って感じの。汗くさいしでっかいのが3人集まると怖いしさぁ。
こういうデリカシーのかけらもなさそうなお客さんはとっても苦手だったのです。からかわれたりもするし。
だから、ってかホントはダメなんだけど、そそくさと、愛想悪く接客して、できるだけソコにいないようにして。
そんな彼らから唐揚げの注文が入りました。
あいたー記念すべき最初のお客さんが彼らかぁ・・・
ボクはちょっとがっくりしたけど、気を取り直して新しい唐揚げを作りました。
「できました。お願いしまーす」
自分で持っていくのは、ちょっと嫌だったので
おばちゃんにもっていってもらいました。
おっきな声でしゃべる彼らですから、いやでも聞こえてきます。
「きたきたきたー」
「いつもと違うことね?」
「いただきまーす」
「お!うめー」
「食べてみ、まじうめー」
なんだか、コッソリ厨房で聞いててこちょばくなってきました。
とにかく成功です。おいしーって言ってくれてる。
なんだかすごく毛嫌いしてたお客さんだったんだけど、お料理が褒められて、とっても愛おしく思えてきました。
しばらくして、唐揚げに追加注文がきたときは。
こっそり1個多く盛りつけしちゃった。
あのトキのコトは鮮明によく覚えてる。
あれ以来しばらく得意料理は唐揚げって言ってたんだ。
いまは違うけどね。

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